治療法の適応・選択・治療計画について
本疾患は発生頻度が少なく、聴神経腫瘍の1/20ぐらいと考えられています。したがって、
現在でも明確な治療基準等がないと言ってもよいと思います。
一般的には、無症状のケースや高齢者、腫瘍が小さい場合には積極的に治療が行われる
ことは少なく、治療方針としては経過観察・放射線治療・手術の3つの選択肢があります。
症状を呈している大きな腫瘍で高齢でない場合に手術適応があると考えられます。
舌の麻痺や呂律難などの舌下神経症状や嚥下障害や嗄声などの下位脳神経症状がないケースで
手術を行う場合、ダンベル型であれば頭蓋内の部分だけを切除して舌下神経管内と頭蓋外部分を
残存させる戦略もあります。
経過観察と放射線治療について
経過観察を行うことになった場合には、腫瘍が発見されたばかりであれば、まずは半年後に
造影MRIを再検します。大きさに変化が見られなければ1年に1回のペースでMRIのフォロー
アップを行ってゆきます。
定位的放射線治療については、ガンマナイフ・サイバーナイフ・定位的ライナック等が
行われていますが、いずれも長期成績は報告されていません。
手術(外科的治療)について [この腫瘍の手術は専門性を要求されます]
各タイプに対する手術方法は頸静脈孔神経鞘腫と基本的にはほぼ同一ですが、舌下神経鞘腫に
特徴的な点は以下のようです。
舌下神経管内に進入する場合には、頸静脈孔神経鞘腫の場合と異なって、後頭顆を中心に削徐を
行い、舌下神経管を開放して硬膜に包まれた腫瘍を確認します。
舌下神経鞘腫の場合には基本的には乳突洞の削開は不要ですが、前述の後頭顆の削開 (舌下神経
管開放)と第一頸椎の後弓を要することが多いのが特徴です。
腫瘍の存在する位置によって、頭蓋内限局型、頭蓋外限局型、ダンベル型に大きく分類され、
それぞれに対して手術方法が異なります。
・頭蓋内限局型に対しては通常は脳外科のスタンダードな手術方法である外側後頭下到達法が
用いられます。
・舌下神経管内あるいは頭蓋外限局型は通常、手術の対象になりにくいのが現状ですが、
手術を行う場合には頭蓋底手術手技が必要となります。
・ダンベル型に対しては、脳外科スタンダードな外側後頭下到達法に加えて頭蓋底手術手技を
用いると、腫瘍の全摘出も可能となります。
[手術のイラスト] 左側
腫瘍摘出前 「TUMOR」とある灰色の部分が腫瘍です。腫瘍は頭蓋内外にまたがる「ダンベル型」です。
腫瘍摘出後 腫瘍は頭蓋内・舌下神経管内・頭蓋外にわたって全摘され、
発生起源である舌下神経の1本の神経根は切断してあります。
◎舌麻痺で発症した水頭症を伴った患者さんの例
(左舌下神経鞘腫・ダンベル型 赤矢印は舌下神経管内部分 )
◎頭痛で発症した患者さんの例
(左舌下神経鞘腫・頭蓋内限局型)
◎舌下神経麻痺で発症した患者さんの例
(左舌下神経鞘腫・頭蓋外限局型)
聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍関連のメニュー
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聴神経腫瘍の他、顔面神経鞘腫・三叉神経鞘腫・頸静脈孔神経鞘腫などの
小脳橋角部腫瘍について解説。
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東京医大 脳神経外科の手術適応。
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聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍に対する種々の手術アプローチの利点と欠点を
はじめとして特徴を解説。
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聴神経腫瘍に対する種々の手術アプローチの使い分け方、小脳橋角部腫瘍の
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「初診・セカンドオピニオン外来スケジュール」
テレビ東京の番組で「神の手」福島孝徳教授に信頼される医師の1人に挙げられました。
TV内容
「神の手」福島孝徳教授とのセミナー
リーフレット
当科では、聴神経腫瘍をはじめとして小脳橋角部腫瘍の手術を専門的に行っており、
手術中の神経モニタリングを徹底して行い、また、さまざまな手術方法を患者
さんによって使いわけて、最新の治療により良好な成績をあげております。
気になる症状等ございましたら、お気軽にご相談いただければ幸いです。